戦火

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試制百式重爆撃機、これが増加試作重爆撃機の仮の名前だ。 搭載するエンジンが再三再四変わるなど、試行錯誤が繰り返し行われていた。 制作している、川西航空機社は軍からの要求に振り回されていた。しかし、箱根大学の協力のもと、やっと満足得たエンジンと大重量を支える足周りを得ることが出来た。 この試制百式重爆撃機は、陸海軍で共用されることに成っている。日本で実用為れる初の重爆撃機であることと、研究開発に多大な費用が掛ったため、陸軍或いは海軍のどちらか一方の予算では、足りなかったからだ。 野中五朗海軍大尉が、この試制百式重爆撃機隊の飛行隊長である。 「いいか、よく聞け。本日の作戦は陸軍からの要請で実施為れる作戦だ。だからって手は抜くんじゃねぇぞ。試験運用してるのは、我が海軍だ。海軍の奴らはだらしがねぇと云われるような、無様な戦果は許されねぇぞ。陸軍の奴らの手本に成るような戦果を上げる。褌締めてことに当たれいいな!」 「おおうぅ!」 「かかれーっ!」 単発機のそれとは違うエンジン音を響かせ、ゆっくり誘導路から滑走路に向かう、試制百式重爆撃機の一機当たり四発の発動機は、全身を震わす力強さがあった。 一機当たり、25番(250キロ)陸用爆弾24発を積み、次々に離陸して行く。 目指すは、シベリア鉄道アフレーモフ鉄橋。20機試制百式重爆撃機は編隊を組むと、一路西に進路をとった。 「各部署配置状況知らせ」 「爆撃手兼機首銃座よし」 「機上整備士よし」 「航法無線士よし」 「上部一番銃座よし」 「下部一番銃座よし」 「上部二番銃座よし」 「下部二番銃座よし」 「後部銃座よし」 「よし、肩の力抜いてよく見張れ。初陣だからと言って緊張擦るなよ。訓練通りやれ、機体は頑丈だ大船に乗ってるんだ安心しろ。」 「後部銃座より、7時下方より味方機来ます」 護衛の戦闘機隊だ。 アフレーモフ鉄橋まで付いてくれるありかたい味方だ。 戦闘機と合流すると、北に進路を変える。 これでアフレーモフ鉄橋に真っ直ぐ進むことになる。 どれだけのソ連機が上がって来るのか、西へ取った擬滿進路に騙されて繰れたら、まぁ護衛も付いてる。 野中五朗大尉は、作戦の成功だけを思い浮かべた。
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