第三章 心とは

4/12
35人が本棚に入れています
本棚に追加
/107ページ
「……来てしまったものは仕方無いから……椿姫、黄玉様。危険な事はしないでくださいよ」 「「はーい」」 二人は暢気な声で手を上げて答える。 危険な事をするのはわたしだけで良い。 この二人は危険な事をする必要はない。 強い思いを秘めて、先に進む。 「……来たか」 抑揚の無い冷たい声は正しく『氷の宮』と呼ぶに相応しいのでは無いだろうか? 太刀を持ち、何の感情も宿っていない瞳は見る者を凍らせるのかもしれない。 「……」 わたしは無言で腕に巻いた数珠を外し、手に持つ。 そこにため込んだ霊力がどれ程、雫に通用するか分からないがやるしかあるまい。 助ける為には少々の犠牲も必要だろう。 そう……少々の犠牲がな…… 「……こないだの様にはいかないぞ」 「……来い」 闇色の衣を脱ぎ捨て、雫に走り寄る。 ……その時、一陣の風が吹いた。
/107ページ

最初のコメントを投稿しよう!