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「……来てしまったものは仕方無いから……椿姫、黄玉様。危険な事はしないでくださいよ」
「「はーい」」
二人は暢気な声で手を上げて答える。
危険な事をするのはわたしだけで良い。
この二人は危険な事をする必要はない。
強い思いを秘めて、先に進む。
「……来たか」
抑揚の無い冷たい声は正しく『氷の宮』と呼ぶに相応しいのでは無いだろうか?
太刀を持ち、何の感情も宿っていない瞳は見る者を凍らせるのかもしれない。
「……」
わたしは無言で腕に巻いた数珠を外し、手に持つ。
そこにため込んだ霊力がどれ程、雫に通用するか分からないがやるしかあるまい。
助ける為には少々の犠牲も必要だろう。
そう……少々の犠牲がな……
「……こないだの様にはいかないぞ」
「……来い」
闇色の衣を脱ぎ捨て、雫に走り寄る。
……その時、一陣の風が吹いた。
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