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太刀を握る雫の手がそこから離れる。
わたしは地に手をついて、肩で息をする。
息が荒く、目の前が霞む。
慌てて、東宮様と椿姫が駆け寄ってくる足音が聞こえる。
『まだだ……まだ終わらせぬ……』
……まだ、逝ってないのか……
『我が悲願……我らが悲願成し遂げるまで……逝く訳にはいかぬ……』
艶やかな女性の怨霊は最後の力を振り絞って雫にとりつこうとする。
くそ……もう……力が残ってない……
残りの力で肩の太刀を抜く。
そして、そのまま目の前は暗転してしまった。
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