第三章 心とは

9/12
前へ
/107ページ
次へ
太刀を握る雫の手がそこから離れる。 わたしは地に手をついて、肩で息をする。 息が荒く、目の前が霞む。 慌てて、東宮様と椿姫が駆け寄ってくる足音が聞こえる。 『まだだ……まだ終わらせぬ……』 ……まだ、逝ってないのか…… 『我が悲願……我らが悲願成し遂げるまで……逝く訳にはいかぬ……』 艶やかな女性の怨霊は最後の力を振り絞って雫にとりつこうとする。 くそ……もう……力が残ってない…… 残りの力で肩の太刀を抜く。 そして、そのまま目の前は暗転してしまった。
/107ページ

最初のコメントを投稿しよう!

35人が本棚に入れています
本棚に追加