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少女は小さくそう呟くとリベラルに背を向け、くすくす笑いながらどこかへ走って行く。
リベラルは慌てて彼女の後を追った。
「待って下さい!貴女は──」
「そんなにひっしにはしってて、だいじょうぶ?」
少女は相変わらず可笑しそうに笑いながら走っている。
すると突然、リベラルの身体が大きく揺れた。
「なっ…!」
自分の足元を見ると、両足が赤黒い沼地のようなものにどっぷり浸かっていた。
もがけばもがく程身体は沈んで行く。
ゆっくり沈んで行くリベラルを少女はただじっと見つめる。
「ねぇ…」
少女はにっこり微笑みながらリベラルに近付いた。
「 どうしてあたしを、たすけてくれなかったの? 」
リベラルは思わず息を飲んだ。
目の前で愉快そうに自分を見下ろしている少女の顔は、あのエノラの顔そのものだったから。
彼女の顔面は血だらけで、表情は醜悪に満ちていた。
「エノ、ラさ──」
リベラルの身体は完全に沼の中へと呑み込まれた。
漆黒の闇の中、少女の怪しげな笑い声だけが響く──。
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