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「私は、私の刀は、近藤先生、土方先生、この両先生のために存在しているんです。」
だから、そんな奴が人を斬ることを楽しいとか辛いとかは無いのだという。
「私はただただあのお二人の役に立てれば良いんです。少しでも、役にたてるなら私は鬼にでも何にでもなれる。」
隊士達も何人かは、私が恐ろしいんじゃないかなぁ。
そう言う沖田の表情は顔を背けていて、読み取れない。
「私はね、今が幸せなんです。両親が他界してから、私は無力で姉の世話になるしかなかった。そんな私に刀を教えて、武士にしてくださった。近藤先生と土方先生は、私にとって何よりも代え難いほど大切な方なんです。」
「幸せ、と言いますか。あなたはその結果に相手の浪士に恨まれて生きても、沖田さんは幸せだと言うのですか。」
「相手の浪士にどう思われようと、私は構わないな。私は決めたんです。あのお二方の為ならば、どんな汚れ役だって、誰もが敬遠する仕事だってこなしてみせる。相手が強者であろうと、弱者であろうと、刀を振るうことを厭わないと。
それが、私が出来る両先生への恩返し。
それが私にとっての誠、進むべき士道なんです!」
一息でそう言い切ると、沖田はまた咳き込んだ。
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