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「…ただ、他の人に私と同じ生き方をしてほしいとは思いませんけどね。」
「と、言うと、武士の道を進む者のことですか。」
「ええ、武士の道を進む者は、道から外れるものをすべて捨てなければいけません。妻も、子供も。女子の場合は、夫でしょうか。
そうでもしないと、生きていけない。自分の道が正しいのか解らなくなって、人を殺した罪悪感に耐えていけませんから。だから、若い浪士や、妻子を持つ人達、女子の藩士、そんな人達を斬らねばならない時は、他の道は無かったのか、と残念になりますよ。」
吉岡は言葉を失った。
まさか、沖田の近藤、土方に対する思いがここまでとは思わなかったのだ。
沖田は化け物なんかではない。
寧ろ、心根の通った若者だ。
それが近藤達への忠誠心に繋がり、その忠誠心が沖田自身、自らを化け物にけしかけようとしているのだろう。
自らを化け物にすることで、近藤達の役に立とうと。
恐ろしいほどの覚悟だ。まだ少年とも言えるくらいの男がここまで熟練した武士になり得るものだろうか。
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