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深夜、私は教室に居た。
寝ていた。机も椅子も無い教室の真ん中で。
不思議とその状況に不信感は抱かなかった。
辺りをぐるりと見回すと、何も言わずに立ち上がって教室を出た。
6-4。
小学校の時に私が通っていたクラスだ。
この夢を見た当時の私は中学を卒業していた。
私は何一つ疑う事無く歩き出す。
ふと足下に何かが当たった。
ガシャンと小さな音を立てて倒れたのは、シンバルを叩く猿の人形。
「あ、ごめん。」
昔から物にぶつかると謝る癖があった私は、無意識にそう呟いた。
すると突然、猿の人形が動き出す。
「猿虐待だ!猿虐待だ!」
突然の出来事に私は逃げ出した。
急に怖くなったのだ。
6年生の教室は3階。
私は急いで外に出ようと下の階に降りた。
階段を降りた所で、白い小さな物が跳ねていた。
…うさぎだ。
無類の動物好きな私は、逃げて来た事など一瞬で忘れてうさぎに駆け寄る。
「お前可愛いなー、迷子かい?よしよし…」
「猿を蹴ったね?」
うさぎが言葉を発した。
私は後退りをした。
「猿を蹴った。虐待だ。虐待は罪。罪には罰を。」
馬鹿げてる。
あれは人形だろ?
「君は死刑だ。」
うさぎはそう言うと、後ろ足だけで立上がりメキメキと音を立てて人の形になった。
それでも顔はうさぎのまま。
天井に向かって伸びた耳がひくひくと動く。
私は悲鳴をあげる暇も無く階段をかけ降りた。
一階の廊下を全速力で走る。
ドン、
と、理科室の角で何かにぶつかった。
恐る恐る見上げると、そこには見た事のある警備さんの顔。
私は安心した。
そしてうさぎに追いかけられてるというのを伝えて、どうして追いかけられてるのかも話した。
警備さんは、
「そうか、猿の人形をか…。災難だったね。」
と言うと、懐中電灯の明かりを私に向けた。
「でもそれは立派な虐待だ。虐待は罪。罪には罰を。…君は死刑だ。」
彼の顔が歪んで行くのは、暗闇の中でも確認できた。
うさぎ。どんどん顔だけうさぎになっていく。
私は再び走り出した。
すぐそこには中庭に通じる出口がある。
息を荒くしながら、出口への扉を蹴飛ばして外に出ると、そこには無数のうさぎが跳ねていた。
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