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「何年か前に、ここの村の娘が森で行方不明になったんです」
猟師はそう口火を切った。
「最後にその娘が立ち寄った場所はこの森の奥に住んでた娘の祖母さんの家、その家が盗賊に荒らされて祖母さんは殺されてまして。おまけにその盗賊も何故か死んでいてね」
「その女の子は……?」
「行方不明のままです。
当時子供だったあの子達に友達が、もしかしたら盗賊の手に掛かったかもしれないとはとても私達は言えず、狼に食べられてしまったというしかありませんでした。
以来、毎年あの子達はああして花を供えているんです」
当時、村の子供達には言えなかった真実を何故こうも正直にこの女に話しているのやら。
猟師は心の裡でぼやいた。
「あなたも、ですか?」
「ええ。村の人達はほとんど。あの娘の母親もやってますね」
「そうですか……」
「でも、馬鹿らしいかもしれませんね。ああして花を供えてもあの娘は帰ってこないのに」
「そうでしょうか?」
「え?」
女は花を供えている少女達に視線を向けたまま、女はそう猟師に問いかけてきた。
視線はどこか優しい。
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