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「確かに自己満足かもしれません。
女の子が戻ってくる訳でもありません。
でも、彼女たちが、村の人達がああしてくれている限り、どのような形であれ、その女の子は彼女たちと一緒に生きている。
女の子が見ることの叶わなかった明日を女の子は彼女たちと共有できるのではないでしょうか」
猟師が何も言えずポカンと口を開けているのに気付いたのか、はっとしたように女は口元に手をあてた。
「出過ぎたことを言いました…」
猟師は首を横に振った。
「…いや、そう言ってくれる人がいるなら嬉しいよ」
と、女を呼ぶ声がした。同伴してる男の声だ。
「…そろそろ行かなくちゃ。この3日、村の方々には本当にお世話になりました。ありがとうございました」
そう言って女は頭を下げた。
それから、どこか気弱そうな印象を与える男の方へ歩きだそうとした女に、ふと猟師は問いかけてみた。
「お嬢さんはなんで旅をしているんだい?」
足は止まったが、女は振り向かなかった。
「そうですね…」
女は少し考えるようにしながらこう答えた。
「あなたがおっしゃっていた女の子みたいな子が二度と出ないように、でしょうか」
女はそう言うと、振り返らずそのまま歩いて行った。
赤いフードがただ翻っただけだった。
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