89人が本棚に入れています
本棚に追加
「なぁ」
暫く歩き、村が見えなくなった頃、男の方が横に並んで歩く女に声をかけた。
「なあに?」
「本当に良かったのか?何も言わず」
なんだ、そんなことか。
女は心中で思わずそう考えた。
男は男なりに気を使ってくれたようだが、そんなのは生憎無用だった。
「言いたいことは伝えられたからもういいの。それに、村の人が知っていた少女はもうどこにもいないわ」
「……」
男は何も言わない。
「私は二度と“私みたいな”人を出さないためにこうして旅をしてるの。だから私は私が選んだこの道を行くだけ。そうでしょう?」
「……ああ」
風が女のフードを巻き上げる。
その下から覗くのは女が持つにしては不釣り合いな大剣。
「私は、戦う事を選んだのよ」
最初のコメントを投稿しよう!