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あの時――
惨劇の場と化した小屋に立つ男を見たとき、少女の胸には何とも言えない気持ちが沸き上がった。
「お兄さん………」
先程の銃声は花畑の事を教えてくれたあの青年によるものだった。
彼は、小屋に入りながら猟銃で1人を屠った後、腰に隠し持っていた剣で残りを斬り殺したのだ。
あまりにも早い動きに盗賊達は反撃する間もなく、
ある者は頭から2つに割られ、
またある者は頭だけが吹き飛び、
最後の者は血糊で錆びてしまったのか、切れない剣で頭を何回と殴打されグシャグシャになって果てた。
その動作は手慣れていて、だからこの人も盗賊だったのだと自覚させられた。
「ごめん」
血溜まりを踏みながら少女の元に歩み寄った青年の口から出てきたのは短い謝罪の言葉だった。
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