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どうしても逃がしてやりたかったこと。
だが、仲間が横にいた以上、逃げろと言えなかったこと。
だから花畑に行かせて時間稼ぎをし、その間に逃がそうとしたこと。
だが、それが叶わなかったこと。
こうして来た時には手遅れだったこと。
少女は何も言わず、ただ青年の告白を聞いていた。
と、青年はふと、何かに気付いたように横を向いた。
その時になって、今更ながらに少女は自分が何も身につけてないことに気付いた。
「……一応、これ」
そう言って、青年が自分の上着を少女の肩に掛けた。
そして少女は、どこにそんな力があったのか、おもむろに青年の手首を掴むと凄まじい力で引っ張った。
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