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少女の手からバスケットと花束が滑り落ちた。
ガシャンと音をたて、零れた葡萄酒が川を作っていく。
だが、少女は下を向いてそれを確認することすら出来ない。
「俺達はさ、いわゆる盗賊って奴でね。最近此処にきたばかりなんだよ」
「いやぁ、こんな森だからな。萎びた婆さん位しかいないと思ってたが、上玉なんてそう簡単に手に入るなんて思ってなかった」
「塒(ねぐら)に女まで手に入るなんて、なぁ?」
男達はゲタゲタと下卑た笑いをあげる。
胸が早鐘を打つのを自覚しながらも少女は動かない。動けない。
「と、いうことで運がなかったな嬢ちゃん」
次の瞬間、布の破かれる乾いた音が響き渡った。
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