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プロローグ
一人の青年がいた。
青年は王室御用達のような美しいティーカップを取り、中に注がれているダージリンを飲んだ。
青年が付けている鼻から額までを隠している覆面(マスク)にあっていない仕草。
なのに何処か気品に溢れていた。
「そうだ、棚の奥に俺の秘蔵プディングがあった筈」
青年は口を綻ばせながら、隣のキッチンに向かう。そして、如何にも上流階級的な高価な食器棚を強引に開けた。
「…………、ない、ない!ないぞ!?」
どれだけ手を入れても目的のものを掴まない。
覆面で見えないが、確実に額に青筋を立てて、彼奴か、と呟く。
「オラァ!!虎帝!!お前俺のプディング食ったろ!?」
「ふぁい?」
虎帝と呼ばれる青年の部屋を蹴り破って叫ぶと、彼は口にプディングを頬張りながら振り返る。
青年のものである。
「ふぁ、ふぁんえふは?」
青年だと分かると虎帝は持っていた文庫本に目を落としてた。
彼も仮面舞踏会で使うような目だけを覆うマスクをしている。
「お前の今食ってるのは俺秘蔵のプディングなんだが?」
「ひっふぇまふよ……ふぅ、これの包みに貴方の名前が書いてましたから。ていうか名前って貴方は子供ですか?あはは」
そう言って包みを見せる。
確かに書かれていた。『長玄』と。
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