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「……いつになったら食事をしてくれるんですか?」
小柄な女が、格子越しに言っている。返事をしなかった。
「三日目ですよ、ハンストですか? しても無駄ですよ」
私は振り向きもしなかった。
「……体が弱りますよ、体力を付けてここから逃げ出そうとか考えないんですか?」
あんたに言われる筋合いないよ、だったら私をここから出しなさいよ。
女は小さな扉から食事を入れ替えた。
「おいしいですよ」
あぁ、そう。
「毒なんか入ってませんよ、安心して下さい」
ガラスでも入ってんじゃない?
女は呆れた様な顔で、私が食べるはずのチャンプルーを食べ始めた。
「安心です」
毒味してくれたっていうの、ご苦労様。
「ハンストなんて無駄ですよ、あなたをここに閉じ込めた人は、あなたが飢えて苦しむ姿を見てもおもしろがるだけです」
私は軽く女を睨んだ。
「……食べて下さいね、何か欲しい物はありませんか?」
女は、反応のない私に話しかける。
困りかけている様だ。
女が出て行った後、ベッドに寝転んだ。
私がいなくなって、ドラマの撮影はどうなったんだろう。事務所はどう言い訳してるのだろうか。きっとパニックになってるだろう。 ……雄二。
私が行方不明なのがわかっただろうか? どう反応しただろう。
テレビでは、私の事は何一つ流れてない。私はいつまでここにいるんだろう。
部屋に付いたのが12時過ぎ。ビール飲んで、なんだかんだして、寝たのは1時は回ってたはず。気が付いたのが朝の4時だか5時だから、3時間から4時間。
どう考えても日本は出てないはず。人一人隠して海外に運ぶなんて、そう簡単にできる事じゃない。
東京なのかしら。
物音一つしない。地下なの?
私をここに閉じ込めた奴って誰なのよ、姿現しなさいよ。
私は鉄格子に捕まって大声で叫んだ。
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