影の主

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「……ラベンダーと、レモンと、イランイランとマジョラムですね」  ひろみさんは、紙にさらさらとメモしている。  この二日、あまりの怒りに夜も眠れない。 「……ストレス解消にアロマテラピーですか……」 「マジョラムはリラックス効果が高いのよ」 「アロマポットに、キャンドルに、あとライターも要りますね。でもこんなんですっきりしますか?」 「他にどんな方法があるのよ、こんな所にいて」 「そうですね……」  時計見ないと昼も夜も分からないような部屋にいて、ストレス溜まらない方がおかしいわよ、よく病気にならないものだ。 「……わかりました、揃えます」 「ひろみさん」  ひろみさんは顔を上げた。脳天気な顔をしていて、余計腹が立ってしまった。 「牛丼が食べたい。アイスクリームも。お寿司も食べたい」  彼女は返事をせずに出て行った。  ……レイカ。  何者なのよ。  なんだろう、何か引っ掛かる。  一度、会った事があるような……。  それも最近じゃない、ずっと昔に。  どこで会ったんだっけ?  考えようとすると、扉のような物が遮ってしまう。  思い出すのを嫌がってるみたいだ。  監禁より重い罪?  脳裏に、赤い血が蘇った。  ……あの女、どこまで知ってるの?        
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