その家

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 視界から、うっすらと光が見える。  明るい。蛍光灯じゃない。太陽の光。  鳥の声がする。  目の前に、天井が見えた。起き上がろうとしたら、少し目眩がした。  右手で布団を押さえて、力を入れたら痛みが走って、悲鳴を上げてしまった。  私の両手、包帯でグルグル巻いてある。  ……あぁ、火傷したんだっけ。  窓を見つめた。太陽の光が差し込んで、窓の外にある鉄格子の模様を、きれいに床に作っている。  ……どこへ行っても鉄格子ね。  でも部屋を遮っている鉄格子はない。  私が怪我人だから、動けないと思ったのかな。  そして私は、とても簡単で単純な、尚且つ重要な事に気が付いた。  私、失敗したんだ……。  ドアが開く音がした。 「大丈夫ですか?」  ひろみさんは、少しムッとしたような声で聞いた。 「大丈夫みたい……」  声が掠れてる。 「丸二日、眠りこけてましたから、疲れも取れたでしょ」  そんなに私寝てたの? 「どうしてあんな事したんですか? 下手したら死んでましたよ」 「火事起こして、消防の人とか来て、見つけてくれたらなぁって……」  ひろみさんは半睨みで私を見た。私は下を向いてしまった。 「どっちみち、ここに移す予定でしたけどね」 「そうなの?」 「同じ所に長くいればアシがつきます」 「それで、ここはどこ?」 「藤沢家所有の別荘です」  いくつ別荘があるの? 「まだ完璧な体じゃないんですから、静養して下さいね。今あなたに死なれると困りますから」  ……どういう事? 「ひろみさん」  彼女は黙って振り向いた。 「ここには、あの重苦しい鉄格子、無いみたいだけど……」 「廊下にありますよ。見張りもいます。あの地下牢よりは身動きできますよ」        
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