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 私は濡れた髪をタオルで拭きながら、化粧水をつけた。  しかしあの女、腹が立つ。いきなりひっぱたくってのはどういう了見よ、パパのお情けとか、恩知らずとか言い出し……?  その時、何か、ひっかかった。  あの時レイカは何て言った?  ──おかげで、ここに連れてくるハメになったじゃない。  変ね、ひろみさんは同じ所にいればアシが付くから、ここに移す予定だったって……。  どういう事? 食い違ってる。  まさかひろみさんが、私の隠し場所を判断してるとは思えない。  て事は、私をここに連れてくるつもりでいたのは誰なの?  レイカ以外に、黒幕がいる? それとも別口が?  あの様子じゃ、レイカがひろみさんに私の世話をしろと言ったとしか思えない。  誰かが、レイカを利用している? 何のために?  だとしたら、考えられるのは、会社乗っ取り。  大財閥だもの。ましてや社長が倒れて入院中、取って代わるには絶好のチャンス。  有り得ない話じゃない。  社長の娘蹴落とすなんて、よっぽどの事しないと無理よね。  ましてや人一人監禁なんて、絶好のスキャンダルじゃない。これを利用しない手はない。  すると、私はどうなるの? やっぱり殺されるの?  落ち着かせるために深呼吸した。  ……ひろみさんにお願いして、またアロマの道具もらおう。神経擦り切れそうだ。  ぺたぺたと、頬にパッティングした。鼻の脇に、吹き出物が出来ている。  ストレスかな、やっぱり。  ふいに思い出した。  ──お前、左のほっぺたにニキビできてるぞ。  ──うるさいな。  CDの売り上げ、どうなったのかな。  ──ドラマの主題歌なんだよね、これ。  私のドラマの主題歌も歌って欲しいって言ったら、そんな事俺の一存で決められないって……。  ──ね、この歌の子猫ちゃんて私?  ──お前って決まった訳じゃねぇよ。  雄二……。        
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