136人が本棚に入れています
本棚に追加
「熱海に、ホテル建てる話が進んでるんですけど」
「ホテル?」
「ビシネスホテルなんですけど。温泉も引くとか引かないとか」
この不景気に、ホテルねぇ。
フジサワって、電気機器にかけちゃ世界一じゃない。これ以上名前さらしめてどうすんのよ。
第二のビル・ゲイツでも目差してんのかしら、あの女。
「フジサワはあまり建設と運輸に力がありません。それで他社が名乗りをあげたんですけど……。どうやら、ビル建設の話が、そこに洩れたみたいな感じなんです」
「どうして洩れたの? それもハッカー?」
「いえ、これは話し合いの段階での事が洩れてるので、ハッカーとは考えにくくて」
て事は、誰かが故意に?
「はっきりどこから伝わったか判らないんです。土地売買がはっきりしないうちに、他社が入ってきた、みたいですね」
「他社ってどこ?」
「マルガリータです」
エステか。温泉引くって事は、スパにでもしたいのかもしれない。
「マルガリータは、アミューズと提携してるみたいなんで。こっちの方が怜香様には深刻で。建設に幅を利かせたがってますから」
アミューズって、有名は建設会社よね。そこと契約してるのか。
確かに、コンピュータウイルスよりは、ビル建設のトラブルの方が深刻だろうな。
フジサワが信用ないとなれば、マルガリータに土地売るかも。
それであんなに焦ってたのか。
そんな企業経営の話、下っ端が分かる訳ない。
やっぱりレイカを追い込んで、取って代わろうとしてる?
だからあんなにピリピリしてるのかも。
「安積さん、組織がしっかりしてます、私達二人じゃ、どうする事も出来ませんよ」
「ひろみさん、あなた反逆者が誰か知ってるね」
「え」
「知ってるでしょ」
どうも、内部事情に詳しすぎる。あのレイカが、ひろみさんにこんな話するとは思えない。やっぱり誰かと繋がってるんだ。
「あなたはその人の言いなりになってる、悪い言い方をすれば脅されてる」
「そんな……」
「あるいは」
ひろみさんから困惑の表情が 消えた。
「手を組んでる」
しばらく沈黙が続いた。その間、彼女の表情は静かだった。
最初のコメントを投稿しよう!