反逆

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「熱海に、ホテル建てる話が進んでるんですけど」 「ホテル?」 「ビシネスホテルなんですけど。温泉も引くとか引かないとか」  この不景気に、ホテルねぇ。  フジサワって、電気機器にかけちゃ世界一じゃない。これ以上名前さらしめてどうすんのよ。  第二のビル・ゲイツでも目差してんのかしら、あの女。 「フジサワはあまり建設と運輸に力がありません。それで他社が名乗りをあげたんですけど……。どうやら、ビル建設の話が、そこに洩れたみたいな感じなんです」 「どうして洩れたの? それもハッカー?」 「いえ、これは話し合いの段階での事が洩れてるので、ハッカーとは考えにくくて」  て事は、誰かが故意に? 「はっきりどこから伝わったか判らないんです。土地売買がはっきりしないうちに、他社が入ってきた、みたいですね」 「他社ってどこ?」 「マルガリータです」  エステか。温泉引くって事は、スパにでもしたいのかもしれない。 「マルガリータは、アミューズと提携してるみたいなんで。こっちの方が怜香様には深刻で。建設に幅を利かせたがってますから」  アミューズって、有名は建設会社よね。そこと契約してるのか。  確かに、コンピュータウイルスよりは、ビル建設のトラブルの方が深刻だろうな。  フジサワが信用ないとなれば、マルガリータに土地売るかも。  それであんなに焦ってたのか。  そんな企業経営の話、下っ端が分かる訳ない。  やっぱりレイカを追い込んで、取って代わろうとしてる?  だからあんなにピリピリしてるのかも。 「安積さん、組織がしっかりしてます、私達二人じゃ、どうする事も出来ませんよ」 「ひろみさん、あなた反逆者が誰か知ってるね」 「え」 「知ってるでしょ」  どうも、内部事情に詳しすぎる。あのレイカが、ひろみさんにこんな話するとは思えない。やっぱり誰かと繋がってるんだ。 「あなたはその人の言いなりになってる、悪い言い方をすれば脅されてる」 「そんな……」 「あるいは」  ひろみさんから困惑の表情が 消えた。 「手を組んでる」  しばらく沈黙が続いた。その間、彼女の表情は静かだった。
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