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「……手を組んでる相手なんていません、脅迫もされてません」
私は目線をずらした。
「そんな風に考えてたんですか?」
「まぁ……」
彼女はため息をついて、横を向いた。
「幻滅しました」
「そう……」
本当なのかな。
ひろみさんはこんな契約の話、どこから聞いてくるのだろう。
「怜香様は私が近くにいても気にせず仕事の話とかしてます、嫌がおうでも聞こえてきます」
……どうも、腑に落ちない。
レイカは私をここに連れて来たがらなかった。でもひろみさんはここに連れて来る予定だったって……。
間にもう一人、人間がいる様な気がしてならない。
考えすぎだろうか。
「安積さん、余計な詮索はしない方がいいですよ、身が危なくなるだけです」
「早く、自由になりたい……」
「大丈夫ですよ」
ここから出たら、何しよう。
まずは警察に事情聴取されて、マスコミもうるさそうだな。
……雄二に、会いに行かなきゃ。今頃何やってんだろう? あいつ、そう言えば煙草吸ってたな。心配事やイライラすると、吸い出してしまう。やめたはずなのに。
──何回目の禁煙?
──うるさい。
「自由になれますよ、少なくとも怜香様からは」
ひろみさんは、後ろを向いて、テーブルの上のコーヒーカップを片付け始めた。
少なくとも?
どういう事?
すると、あの大男が入ってきた。
「今着きました、お茶が欲しいと言ってます」
「何? 早いじゃない」
「晴臣様ももうすぐ着くらしいです」
「ヒマなの?」
……?
ひろみさんは面倒臭そうにつぶやいた。
「それじゃ、また」
ひろみさんは小声で言って、部屋を出て行った。
「お前はしばらくここから出るな」
そう言って、大男も部屋を出た。
晴臣って、あの従兄弟の専務?
あの男、ひろみさんに敬語使ってた。ひろみさんの方が立場上なの?
しかしレイカって、頻繁にここに出入りしてる。忙しくないの? 熱海のホテルでトラブってるはずなのに。
ドアノブに触ってみた。動かない。鍵が掛かってる。
あの男が掛けたのかな。どうして私をここから出さないんだろう?
……何かある?
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