軟禁

前夜

　私の部屋は渋谷、割とリッチなマンションに住んでいる。
　オフィスが代わって、金銭面も衣装の心配もしなくていい、実に快適。
　私はブルーの壁を見上げた。あいつの好きな色。私も好きだけど。
　冷蔵庫の中から、ビールを取り出す。テレビをつけた。化粧品のＣＭで、私が「肌、新鮮」とか言って笑ってた。
　この世界で３年、頻繁にテレビに出る様になって八ヶ月ちょっと。あまり変わりない自分に驚いている。変わったのは周りだ。
　買い物なんかに行くと、あの店員の愛想の良さ。昔とはえらい違い。
　ファンレターとは別に「何とかくんとラブシーンなんかして、許せない」とか脅迫じみた物が送られてきて、あれには参った。いつの時代にもこんなアホがいるんだな。
　私はため息を付いた。何か、眠い。明日は７時でスタジオ、明後日はロケ。
　そうだ、確か雑誌の取材が入ってたはず。チョコレートのＣＭ撮りと、次の連ドラの顔合わせ……。
　色んな事を考えながら、いつの間にか眠っていた。