反逆

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 ガチャガチャとドアノブを回した。びくともしない。  何かない?  置き時計が目に飛び込んだ。あれだ!  時計でドアノブを殴り付けた。白い物が剥がれていく。  ドアノブは思ったより頑丈で、色が落ちるだけだった。  もうへたりこんでしまった。この時計、結構重い。腕がじんじんいっている。  このドアノブ、何で出来てんだよ。  しばらくして、ガチャっと音がした。 「何暴れてるんですか?」  ひろみさんは、子供を叱るような態度で、私を真上から声を出した。 「イギリスのアンティーク物ですよ。怜香様のお気に入りだったのに」  レイカ、レイカ、レイカ……。  私の上に押し掛かる名前。 「……ね、何かあるの?」 「……仕事の事で忙しいんでしょう」 「それだけ?」  彼女は返事をしなかった。  私に知られたくない事が、ある? 「知りたいんですか?」  これ以上、あの女に縛られたくない。 「事情を知ったら、今よりひどい状態になると思いますよ」 「どうして?」  沈黙が続いた。  その間、ひろみさんの顔は怖かった。いつもの彼女じゃない。  しばらくして、彼女はドアから離れた。 「それじゃ、確かめてみたらどうです?」  少し、驚いた。  今まで私がレイカに対抗するのを、反対してたのに。 「行かないんですか?」  ドアの向こうの、廊下の壁を見ていた。 「多分、あなたの知りたい事は全て分かりますよ、今ここを出たら」  そう。  ずっと分からなかった、思い出しそうで思い出せなかった、私とレイカとの関係。ここに閉じ込められた理由、レイカが私を恨んでる理由。  ひろみさんの脇を通り過ぎ、部屋を出た。  例のレイカの部屋へ向かった。ドアの前で一度立ち止まった。この向こうに、真実が見える。  ドアを開けるのが怖い。あんなに知りたかった事なのに。  頭の奥で、指令している。開けてはいけない、嫌な事を思い出す。本能がそう叫んでいる。 「どうしたんですか?」  後ろで声がした。 「あんなに気にしていたくせに」  ドアに手を触れた。指が震えている。  ドアノブを回して、少し音を立てて、ドアが開いた。        
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