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「すまない、遼。なぜだか、力が抜けて出てこない…」
「おい、そこで固まっている三人。武を家まで連れていけ」
さすがに体格差が物をいい、遼は武の頭を肩に置いた状態で、下にへたりこんでしまったのだった。
「武、ズルイゾ!お前ばかりが遼に抱き着けて」
「…なんの事だかさっぱり分からない」
「嘘をつくな。しかもいいところを取りやがって…」
「いいところって、気がついたらあいつらが居なくなっていたじゃないか」
「お前が倒したんだろうが!」
「…全然、覚えていない」
「だ、か、ら!」
「うるさいぞ、馬鹿二人。武は覚えていないんだからしょうがないだろ」
「でもさ~…」
「荒、武を運んでくれ。いい加減疲れた」
「わかった」
いままでの会話は遼達の周りで二人が騒いでいたものだ。武は遼の肩に顎を置きつつ相手をしていた。
「すまない、荒」
「消耗が激しいな。力が伝わってこない」
「家についたら、何か飲み物を出すよ。体も冷えているからな」
戦いの間、霧雨は続いていたので全員の体温は感じているよりも多く奪われていたのだ。
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