第5章 過去の記憶

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『サアアアァァァ…』  広い庭に風の通り抜ける音が響く。 『バキッ』 「うあっ!」  庭の中央付近に二つの人影が現れる。片方は三十前半の屈強な男。もう片方は十歳前後の少女だった。二人とも手に木刀を持っていた。さっきの声を出したのは少女の方で、片膝を地面についていた。その顔や腕には青痣が多く見られた。 「まだまだ甘いぞ、それでこの家が継げるのか!」 「くっそ…たれ!」  少女は男の言葉に体を起こし、体制を整えた。その目には、目の前に立つ男に対しての殺気が込められていた。 「怖じけづくいたかと思ったぞ。さっさと来い、弱い跡取りよ」 「くっ、父上ええぇぇ…!」  少女は叫びながら男、『父』に向かって走った。そして距離が半分位まで縮まると、少女の姿が父親の『視界』から消えた。残像が出来んばかりのスピードを出しているのだ。 「………」  父親は焦らず、自分の右側の空間を袈裟切りにした。
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