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『サアアアァァァ…』
広い庭に風の通り抜ける音が響く。
『バキッ』
「うあっ!」
庭の中央付近に二つの人影が現れる。片方は三十前半の屈強な男。もう片方は十歳前後の少女だった。二人とも手に木刀を持っていた。さっきの声を出したのは少女の方で、片膝を地面についていた。その顔や腕には青痣が多く見られた。
「まだまだ甘いぞ、それでこの家が継げるのか!」
「くっそ…たれ!」
少女は男の言葉に体を起こし、体制を整えた。その目には、目の前に立つ男に対しての殺気が込められていた。
「怖じけづくいたかと思ったぞ。さっさと来い、弱い跡取りよ」
「くっ、父上ええぇぇ…!」
少女は叫びながら男、『父』に向かって走った。そして距離が半分位まで縮まると、少女の姿が父親の『視界』から消えた。残像が出来んばかりのスピードを出しているのだ。
「………」
父親は焦らず、自分の右側の空間を袈裟切りにした。
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