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「…ここか…。」
とある城門の近く、そこに一人の男がいた。先程の呟きにも似た言葉は、どうやらこの男が口にしたものらしい。
「おい!そこの者!」
男が声の主に顔を向けると、そこには腰に差した剣に手をかけている兵士の姿があった。
兵士はそのままの体勢で男に話しかけた。
「見た所、平民の様だが…。何か用でもあるのか?」
「はい。実は……」
男は自分の名を名乗ると、この城の主に面会したいと申し出た。
「…書状でもない限り、殿がお会いになるとは思えぬが…。」
兵士はそう言うと、呆れ顔で男の身なりを見た。
しかし、男はそんな兵士を気にするでもなく話を進める。
「おそらく名をお聞きになれば面会して下さると思うのですが…。お願い致します。どうか名だけでもお伝え下さい。」
「…分かった。しばし待て。」
兵士は男に折れたのか、城門にいる他の兵士に事情を告げると、急ぎ足で城の主の元へと向かっていった。
しかし、この兵士の行動が後々の歴史を大きく変えることになるとは、この時まだ誰も予想がつかなかった。
一人の男を除いては…。
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