プロローグ

2/3
1980人が本棚に入れています
本棚に追加
/448ページ
「…ここか…。」 とある城門の近く、そこに一人の男がいた。先程の呟きにも似た言葉は、どうやらこの男が口にしたものらしい。 「おい!そこの者!」 男が声の主に顔を向けると、そこには腰に差した剣に手をかけている兵士の姿があった。 兵士はそのままの体勢で男に話しかけた。 「見た所、平民の様だが…。何か用でもあるのか?」 「はい。実は……」 男は自分の名を名乗ると、この城の主に面会したいと申し出た。 「…書状でもない限り、殿がお会いになるとは思えぬが…。」 兵士はそう言うと、呆れ顔で男の身なりを見た。 しかし、男はそんな兵士を気にするでもなく話を進める。 「おそらく名をお聞きになれば面会して下さると思うのですが…。お願い致します。どうか名だけでもお伝え下さい。」 「…分かった。しばし待て。」 兵士は男に折れたのか、城門にいる他の兵士に事情を告げると、急ぎ足で城の主の元へと向かっていった。 しかし、この兵士の行動が後々の歴史を大きく変えることになるとは、この時まだ誰も予想がつかなかった。 一人の男を除いては…。
/448ページ

最初のコメントを投稿しよう!