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一方、慌ただしい様子で城内を歩く兵士は何者かに呼び止められていた。
「そこの者。何を急いでいるのだ?」
その者を見た兵士が慌てて姿勢を正す。
「はっ!実は……」
兵士は先程の出来事を話した。しかし、兵士はここであることに気付く。
城門近くで待たせている男の名を口にした途端、その者の顔が青ざめたのである。
「…その者は本当にそう申したのか…?」
「はい。名を言えば分かると…。」
「…そうか…。ご苦労だった。後は私が伝えておこう。…それと、お主はいつからここに仕えているのだ?」
「はっ。一ヶ月程前からでございます。」
「そうか…。もう下がって良いぞ。」
兵士は何故その様なことを聞かれたのかと首を傾げたが、答えは見つからなかった。
城門近くで待っていた男が城内へ入っていったのは、それからすぐのことである。
その時の男の表情は何かに確信を持っている様だった。
男が一室に案内されると、そこには二人の男がいた。この城の主と先程、兵士と話していた者である。
「…お久しぶりですね。袁紹(エンショウ)殿に審配(シンパイ)殿。」
二人の男――袁紹と審配に向かって男はそう言った。
「本当にお主なのか…?」
「袁紹殿は私の顔を見ていませんでしたね。ですが、審配殿でしたら分かると思います。」
男の言葉に、袁紹は審配を見た。
「…間違いありません。この男は張恭(チョウキョウ)です。」
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