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「…間違いありません。この男は張恭です。」
張恭――それがこの世界での僕の名前。この名前を呼ばれて懐かしさを感じたが、感傷にひたる間もなく審配の口が開く。
「お主は曹操に敗れ、処されたはず。それが何故…?」
「…それは私がこの時代の者ではないからです。」
僕のこの発言に袁紹と審配は言葉をなくしていた。
「…この時代の者ではない?何を言うかと思えば…。」
そう言った袁紹が呆れた表情で見る。その隣の審配も同じ様な表情だった。まぁ無理もないが…。
「まずはこれを見て下さい。」
僕は腰に提げている袋の中から一冊の本を取り出した。
「三国志?何だそれは?」
「見て頂ければ分かります。」
ちなみに、この本は袁紹と曹操が争い始める所から袁家の滅亡までが書かれている。
しばらくして本を見終えたのか、袁紹は本を床にたたきつけ僕を睨(にら)んだ。
「睨まれても困ります。私はただ真実を伝えたまでです。」
「これが真実だと?私が曹操に敗れ、袁家が滅亡するなどあるわけなかろう!」
一応は最後まで見てくれた様だが、かかった時間からすると深くは見ていない様だ…。
顔を真っ赤にしている袁紹の隣では、審配が驚いた表情で僕と袁紹の顔を交互に見ている。
そろそろ頃合いだろうな…。
「…では試してみますか?」
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