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「袁紹様、客人の前での無礼お許し下さい。ですが、どうしても伝えておきたいことがございまして…。」
この時、袁紹を見ると顔が少しこわばっていた。
「いや…今回は許してやろう。それで伝えておきたいこととは何だ?」
「ここでは話せません。軍事に関することですので…。」
田豊はそう言ってちらりと僕を見る。
「…安心しろ。この者はいずれ仲間になるやもしれぬ者だ。」
この時、袁紹は全てを悟った。少なくとも、僕にはそう見えた。
「…分かりました。」
田豊が一呼吸おいて話し始める。
「今、曹操は献帝(ケンテイ)を擁し、その勢いも衰えを知りません。このままでは我らは中原に出る機会を失ってしまいます。ここは先手をとって洛陽から許都(キョト)に攻めのぼり、献帝を擁しましょう。曹操は呂布との戦いの傷がまだ癒えていませんし、曹操の元に身を寄せていた劉備(リュウビ)も汝南(ジョナン)で独立しています。攻めるならば今が好機です。」
…え?劉備が汝南で独立!?確かこの時は下ヒ(カヒ)に向かったと思うのだが…。
僕はこの理由を考えようとしたが、袁紹の言葉で我に返った。
「…お前の申すことは分かった。実は私も先程、同じことを考えていたのだが、この通り私は忙しいので皆を集めることが出来なかったのだ。田豊、私の用事も済んだので急ぎ皆を会議室に集めるのだ。この者の紹介もせねばならんのでな。」
何て見栄っ張りな人なんだ…。ともあれ僕は袁紹に仕えることが出来たし、まずは良しとしよう。
その後、田豊と袁紹がいなくなり、部屋には審配と僕の二人が残っていた。
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