シルビアとソラリス

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      *** 魔女は話終えてから静かに笑った。 シルビアは嬉しそうな顔、ソラリスは無表情で首を傾げている。 「これで終わりですか?」 ソラリスは訊いた。 「終わりは始まりでもあるのです。完全な終止符なんてありませんからね」 ソラリスは相変わらずの仏頂面で納得はしていないようだった。 「つまり、何かを為すには愛が必要なのですね? だから、叔母様は今まで私達を憎んではいない。そういうことですか?」 シルビアは目を輝かせながら魔女に訊いた。 「そうかもしれませんね。私があなた達を愛しているのは偽り無き事実ですからね」 魔女は答えた。その言葉には、ソラリスも硬い表情を崩して笑った。 魔女はシルビアとソラリスの後ろに立ち、そして2人を抱き寄せ、囁いた。 「この話で何を感じるか、それはあなた達の自由です。私の妹も、命を懸けて、愛を注いであなた達を産みました。大切な妹が力よりも愛を選んだ。だから──」 その時の魔女とシルビアは幸せそうな顔をしていた。 ただ一人、ソラリスは笑顔であるのだが、どこか虚ろで悲しそうな目をしていた。 アーノルドは、シルビアとソラリスの父親。愛された魔女は母親で、名はアルティミシア。 そして、それを語った魔女の叔母はアルティミシアの姉、ミーシャ。 シルビアとソラリスの18歳の誕生日の後。 争いの絶えないこの世の中で、人に必要なものは愛の形である、とシルビアは誠実に思い続けた。 そうすれば、全ての人々に生きる意味を教えることができると思ったからだ。 それに反して、争いの絶えないこの世の中で、人に必要なのは絶対的な力である、とソラリスは唱え続けた。 愛だの幸せだのくだらない幻想。誰も愛さなければ苦しむことを知らず、絶対的な権力さえあれば自我を保つことが出来ると確信したからだ。
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