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「私たちが憎いですか?」
唐突に問いかけたのはシルビアではなく、ソラリスだった。
自分だけ恐れ、妹に全てを押しつけてはならないと思ったからだ。
「深い愛情を受け、この世に生まれ出でし尊ぶべき命。誰があなた達を憎むというのですか?」
少し表情を曇らせながら、魔女は2人に問い返した。
2人は何て言えば良いのか分からず、俯いたまま黙っていた。
「昔話をしてあげましょう。1人の人間の男と1人の魔女の恋の物語を……」
魔女の言葉にシルビアとソラリスは顔を上げた。
その様子を見て魔女は微笑んで、語り口調で話し始めた。
***
昔々、アーノルドという男がいました。
アーノルドは、とある王国を守るための騎士で、“魔女狩り”という仕事を申しつけられていた。
王国の北の山奥には恐ろしい魔女がいる。
北の山に足を踏み入れたら最後、二度と帰るべき場所へと戻ることはできないらしい。
そう、男が国に申しつけられた仕事は“北の山に死にに行け”というものに等しいものだった。
アーノルドは命令の意味を悟っていた。私は国に捨てられたのだ、と。
それでもアーノルドは誠実に国を思い続けた。今まで守ってきた国が虚構であると思うのが怖かったために。
北の山の麓へ辿り着くと、アーノルドは乗っていた馬から下り、手綱を外すと、それを逃がしてやった。誠実なる感謝を込めて──。
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