第0話

10/10
前へ
/105ページ
次へ
少しの間二人は互いの顔を見合った後、ただ大声で笑い続けた。 夏休みしか帰れないのは、多分寄宿舎のある学校だからだろう。そんなのはこの近くにない。一番近いのでも、片道二時間はかかるところにあるらしい。正直、嫌だった。でも、信頼して、考えてくれたのがわかっていたから、もう困らせたくないと思って納得した。 後になって、既に入学届が出されていたと聞き、回し蹴りを繰り出したのも、良い思い出になったと思う。――金だって、ずっとこのために貯めてたなんて。さっさと学校を出て、自分がなんとかしなくてはならないだろうな、なんて考えた。 バカだよ、あんたは。本当、バカだ。 気恥ずかしくなって顔を俯けた途端、涙が落ちた。 オジサンに気付かれる前にさっと服で拭った。 俺も相当な馬鹿みたいだ。 ――嫌ってわけでは、ないけれど。 .
/105ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加