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扉に近付くにつれ、聞こえてくる包丁の音に目を細めた少年は、ゆっくりとノブを回した。
「おはよう、オジサン」
「よォ、ボウズ。やぁーっと起きたかコノヤロウ」
「ゆっくり寝させてもらいましたよ」
挨拶をかけると共に返ってくる嫌味に嫌味で返しながら少年はクスッと笑った。
「ネクタイ、歪んでますよ」
小さな木製の食卓付近に置いてある椅子の一つに腰を下ろしながら「オジサン」に顔を向ける。
白いシャツにネクタイとエプロンを着けた男は、フライパンを持ちながら少年を見やる。
目が、あった。
と同時にバッと顔を背ける少年に苦笑を漏らしながら、男はフライパンの料理を少年の前の皿に移した。色とりどりの野菜と肉の炒め物に、シンプルながらなかなかの出来栄えだ、と思いながら少年に声を掛ける。
「おい、食わねぇのか?」
ぴく、と肩が動くが、こちらを向くまでには至らない。
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