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「何故傷だらけなのかわからない。誰かもわからない。けど、小せぇガキを傷だらけのままほっぽりだすなんて、俺にはできなかった。」
男が言葉を区切る度に、少年は小さく頷いていた。シャツに熱いものが染み込んだが、気にしない。
「だから、何も言わないおまえをこの店に、家に置いた。おまえは怖がった。色々な人間のいる中で、特に大柄な男を恐がった。でも俺にはわからないし、ただおまえを置いてるだけだった。そんな中、アイツの娘がおまえと少しだけ仲良くなった。それからちょっとずつ、人間に慣れていった。村と、少しずつ親しくなっていった。俺はずっとおまえを育てた。おまえは俺に借りがあるだろう?――俺の店、ついでくれんだろう?知識を持っていて、悪いことはないだろ」
諭すように話す男は、少年を少しだけ待って、一転。挑戦的な瞳で少年を見やった。
「それとも、おまえはそんなこともできないのか…?アイツの娘は――ミエラは、できんのに?」
口の端を歪めて問う男に、少年は俯いたまま頭を左右に強く振った。そして、腕で目を強く擦って、顔を上げた。
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