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「天乃河、だったか……?」 「随分な挨拶だね。せっかく待っててあげたオレに対して失礼だと思わないの? 謝りなよ」 あの自己紹介のときの天使のような笑顔が、現在ではすっかりなりを潜めてしまっている。 だが、琴葉が驚いたのはそんな些細なことではなかった。 「……待ってた? 私をか?」 まさか、と続けられなかったのは、目の前の彼の顔が一層不機嫌なものになったからだ。 琴葉は机の上に鞄を置くと、疾風に向かって深々と頭を下げる。 「そ、それはすまなかった。気づいてやれずに……」 それを遠目に見ていたクラス中の生徒たちに、驚愕の表情が広がった。
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