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声にならない悲鳴を上げ、少年は引きつる喉に必死で空気を送り込んだ。 ――何か、居る…何が? 闇の中うっすらと浮かび上がった輪郭に、どうやら人のようであると理解した刹那、 その貌に濡れたように光る赤い双眸を認め 恐怖のあまり小さく開いた唇からカタカタと歯の根の噛み合わぬ音がこぼれた。 ――人では…ない? じゃあ、何… 身をすくませ動けないその様子が可笑しくてたまらないというかの様に、 血の色をした瞳は笑みの形に細められる。 人の形をしたものは部屋の隅からこちらへゆっくりと歩を進め ついにろうそくの光にその姿を露わにした。 「…っ」 少年には及びもつけぬ長身に濃紺の着流しを纏い その上に流れる濡れたような長い黒髪は青く光りながら膝元までその輪郭を縁取っている。 愉しげに歪められた酷薄そうな唇に、何より――両の眼にたたえられた鋭い、赤。 背筋に冷たい汗を滴らせて声を無くしたままの少年の側へ音もなくするすると歩み寄り、 見開かれた両目を覗きこむように男はその長身を折り曲げた。 「――怖いのか」 薄い唇が揶揄するような色を滲ませて問う。
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