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己の掌握し切れぬ絶望に身を晒す時、人は我知らず笑いをこぼす。
己は泣いているつもりが実は笑っているらしいことが酷く可笑しく感じられ
少年は微かに声を上げて笑った。
「何も…可笑しくなんか」
「しかし、笑っている」
確かに笑っているが既に己が愉しんでいるのか恐れているのか
生きたいのか或いは死にたいのか、良く判らなくなっていた。
――どうにでも成れば良い
手足は床に押さえられ、身を守る物は何もない。
この世に特に想いを馳せることもなく、少年はゆっくり目蓋を下ろした。
眼前に広がるは、色の無い暗黒のみ。
昏い目蓋の向こう側で男が更に己にのし掛かってくるのを感じる。
喉首を絞められるか刃物で裂かれるかぼんやり思案しているところへ喉元にかかる微かな息を感じ
あぁ得体のしれない者にこのまま喉を喰い破られて息絶えるのだと薄ら寒い覚悟を決めた瞬間、
「…ぇ」
暖かい感触に意表を突かれ閉じられていた瞳は反射的に帳を上げた。
――何を…?
びくりと顔を上げた少年を揶揄するように赤い眼が見返し再び白い喉元に顔を埋めると
甘噛みする様に唇を滑らせ鎖骨、胸元とその細い体を順になぞった。
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