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ついぞ息の根を止められるとばかり覚悟していた思考は己の身に起こっている事象に即座には反応できず ただ呆然と男の動きを目で追うに終始する他無い。 愛撫を受けているのだと気づいたのは、着物の襟元を割って赤い舌先が白い胸元を探り始めてからだった。 「! 嫌っ!!」 男を振り払おうと四肢に力を込めるも拘束された手足は頑として動かない。 圧倒的な体格と力の差に先程までとは別の恐怖が色濃く脳裏に広がっていく。 ――犯される… 猛った僧達の荒い息遣い、耳障りに響く水音… 破竹の勢いで脳裏に流れ出す、何年も絶え続けてきた厭な情景から必死で逃れようともがくも やはり強固な腕力の呪縛から逃れることは叶わず白肌は徐々に朱に染められていく。 「やめっ…やめろ!」 屈する事を拒む気力が再び震える唇から言葉を発させる。 頭上からの荒げられた声につと黒髪を垂らした顔を上げた男は、濡れた舌を覗かせて満足そうに笑んだ。 「――やはりその方が良いな。死んだ様な眼では台無しだ」 血の様に赤い眼差しに、慈しむ様な色が滲んだのは気のせいだったろうか。
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