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かたり、と、膳が床に下ろされる振動が伝わる。 あとはこの僧が部屋を立ち去るまで空寝を決め込んでいれば良いと、 目蓋を下ろしたままに耳を済ませるも一向に… ――足音が…しない 聞こえてくるはずの音はそれきり途絶え物が動く気配もない。 もしや空寝に気付かれたのかと少年の中に焦燥ばかりが広がっていった。 ――もしかして、もう居ない? 僧の足音を聞き逃してしまったのではないか…有り得ない事ではない。 そうであるならば無人の空間で一人狸寝入りを続ける己のなんと滑稽な事か。 しかしやはり足音の聞こえた覚えはないが… 無音の室内と疑心暗鬼に居心地の悪さが次第につのり 長い睫を震わせながら少年はうっすらと瞳を開いた。 ――すぐそこに、僧の顔があった。 互いの鼻先が触れ合うほど間近に、男の顔があった。 「ひっ!」 瞬間的に恐怖が全身を支配し引きつれた喉から悲鳴を絞り出そうと開きかけた口は しかし素早く伸びた男の掌によって痛いほどに塞がれた。
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