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その手を振り払おうともがく体を押さえつける男の眼は
熱を帯びて少年にそそがれたまま離れない。
ずっと視られていたのだ。
わずかな音も立てることなく無音の空間の中ずっと…
ぞくり、と背筋が凍り付く。
異常な距離でただじっと己を眺めていたその行為に得体の知れない気味の悪さを感じ
満身の力を込めた細腕で僧の体を押し返そうと抵抗を試みるが
しかし年端もいかぬ少年と男の体躯では力の差は歴然であった。
自由にならない身をそれでもなお
呪縛から逃れようと足掻く細い体を眺めていた両の眼がふいに笑みの形に歪む。
「――!」
口元を押さえつけるとは反対の手が乱雑に少年の襟元を乱す。
腰紐の辺りまで露わになった白肌の上を無骨な掌がゆっくりと這いずった。
――こんな朝から…!
神仏に仕える身でありながら毎夜欲のままに細い体を貪り尽くし
あまつさえ朝であろうと押さえ切れぬ欲情のままに襲いかかる…
なにが修行僧か、もはやただの畜生ではないか。
沸き上がる憤りはしかしこれから始まる行為を思い起こした刹那
恐怖へと取って代わり震える双肩をこわばらせた。
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