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赤黒い月の昇る夜。
深く閉ざされた夜の底。
山の奥に人知れず建つ寺院は、しかし確かな存在感を持ってそこに存在していた。
重厚な扉に繊細な彫り細工、幾人もの僧が寝泊まりできる広々とした居室の数々。
奥深い山の中。
声は外界へ届かず、ここは閉ざされた世界で己が道を究めんと求める場所。
「――っ、…はっ、ぁ……」
「そっちを押さえてろ」
「馬鹿、次は私だ!」
赤黒い月の昇る夜。
深く閉ざされた夜の底。
山の奥に人知れず建つ寺院は、しかし確かな存在感を持ってそこに存在していた。
逃げ出す気力もそがれるような、黒く堅い重厚な扉にぐるりを囲われた広い部屋。
奥深い山の中。
声は外界へ届かず、この毎夜の狂宴を知る者は誰もいない。
「…ひっ…――!!」
細い喉から痙攣したような悲鳴が上がるが
その声に行為を中断する者など誰もいなかった。
格子窓の外、闇の奥。
空に浮かぶ月より赤く鋭い光を帯びた双眸が暗闇の中で愉しげにすうと細められたことなど…
誰も、知るわけはなかった。
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