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肌を伝う男の動きが次第に加速し脇腹から腰へと移動する。
汗ばんだ掌の厭な感触に思わず目尻に泪が浮かんだその時、
「では、その木にしなさい」
格子窓の外から、酷く耳に馴染んだ声がする。
――道元様!
表から流れ込んできた声に僧の貌が一瞬にして驚嘆に染まるのを見逃さず
九死に一生とばかり必死で声を上げようとするも
口元を塞ぐ男の頑強な手によってその望みは叶わない。
しかし絶対にこの気を逃すわけにはいかなかった。
「必要な枝だけ取りなさい。不用意に切り落としては、木に負担がかかります」
――道元様、気付いて、助けて!!
「――! ――!!」
声にならぬ声をなおも上げ続ける少年のみぞおちに
不意に重い拳が振り下ろされた。
「――ぐぅっ…!」
瞬間意識を手放しそうになるのを何とかこらえる。
吐き気を伴う尋常ではない痛みに膝をつき、息もできず床をのたうち回る。
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