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「大人しくできないなら、こうだ」
苦悶の様を眺めていた男は吐き捨てるようにそう、言った。
口唇の端を片方つり上げあざけり笑うかの様なその顔を滲んだ瞳で見上げ、
――鬼だ
鬼が笑っている、と思った。
ここに居るのは皆、人間などではない。
鬼と畜生の群である。
そうでなければ何故この様な仕打ちなど受けようか。
耐えがたい痛みに動くことも呻くこともできず四肢を引きつらせる体の上へ
男の体躯がのしかかり辛うじて下半身を覆っていた衣を引きはがされる。
荒く下卑た息が己の喉元まで迫るのを感じ嫌悪感に堅く瞳を閉じた。
刹那、
「痛ぅっ!!」
耳に届いた予期せぬ声にそろそろと目蓋を上げるとそこに予期せぬ光景が展開していた。
男の掌に突き刺さった…黒い、羽根。
見覚えのある羽根は確かとっさに枕の下に隠したそれではなかったろうか。
それが何かの拍子に舞い出で、猛った男の掌へ食い込んだのらしかった。
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