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雉か何かの声であるかという考えがおぼろげながら脳裏をかすめたその時、
ご と り 。
無機質に厭な音を立ててそれは前触れなく床へと転がり果てた。
己の思考の及ぶ範囲からあまりにかけ離れた光景に消失しかける理性を必死に留め
少年はその目に映る事象を理解するべく努める。
黒ずんだ…人間の腕が…肩口から丸ごと………
「っ、ひぎゃああぁぁぁぁぁぁあああぁぁ!!!!!!!!」
部屋中に響き渡った狂気の声に少年は浮遊しかけた意識を強引に引き戻された。
尚も叫びを上げ続ける男に足元を醜く転がる腕だった肉塊。
尋常ではない物音に何事かと駆けつける寺院の僧達。
足音、悲鳴、阿鼻叫喚。
その最中にいてただ一人少年はぼうと目の前の光景を無感動に見ていた。
目の前で一体何が起きたのか把握することが難しい。
男の腕に突き刺さった黒羽根がそのまま男の腕を焼き落とした……何なのだそれは。
おおよそ現実とは信じがたい話ではないか。
そしてそれ以上に…
何とも奇妙な安堵感を抱きながら少年はその場に座し続けていた。
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