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かの人は、何が、と問う。 こなたには、しかし答える言葉はない。 起きた事とは見ての通りであるがそれに至る経緯を説明するのは月を歩くごとく難しい。 しばし思案に暮れそれでもなお言葉の紡げぬ少年のさまに痺れを切らし、駆けつけた僧の一人が血相を変えて詰め寄った。 「貴様、道元様の問いかけに答えぬか! この部屋で何事が起きたのか早急に申すのだ!」 「! ぐ…ぁ、苦し…」 食事を運んできた僧に乱されたのち必死でかき合わせた着物の襟首を今度は凄まじい形相の僧に締め上げられ、空気を押しとどめられた白い喉元が呼吸を取り戻そうと喘ぐ様にのけぞった。 .
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