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荒々しい挙動にかねてから恐れを感じていた少年の双肩から力が抜け、 張り詰めていた精神がぷつと途切れたことによる虚脱感からか、白い貌は益々色味を失っていた。 「すまないね華菖。 元来気の短い男なのだよ。 許してやっておくれ」 「…はい」 「随分と顔色が悪い。 ゆっくりと休みなさい。 落ち着いたら、また何があったのか教えておくれ」 「……はい」 かの人は、何が、と問う。 こなたには、…しかし、何かを考えるだけの余裕などもう残ってはいない。 変色し転がった腕を忌まわしそうに拾い上げる僧たちと共に部屋を去ってゆく高僧を見送るなり、 糸の切れた人形さながらに布団へと身を投じた少年は、長いまつげに縁取られた双眸を閉じそのまま逃げる様に意識を暗闇へと手放した。 .
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