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するり
僧達は大広間で今も祈祷の最中であり、
よもやその場を抜け出してまで渦中のこの部屋へ忍んで来るなどということは考えがたい。
なれば、この気配は一体……
――いや…この気配は昨日と同じ…
する…
衣擦れの音がすぐ傍らで止まる。
同時に重いほどの視線を布越しに感じ、白い喉は無音の恐怖に耐えかね生唾を飲み下した。
――何をしに来たのか…
昨晩と同じく自分を陵辱せんと忍んできたのか、はたまたやはり息の根を絶たんとやって来たものか…。
いずれにせよ少年にとって歓迎できざる客である事は火を見るより明らかであった。
――とにかく、距離を取らないと
身を守る物が皆無である状況下において得体の知れぬ相手と手の触れる距離に身を横たえている居心地の悪さにいつまでも耐えることは出来ない。
距離を離し説得を敢行すればあるいは何事もなく撤退するやもと己に言い聞かせ、意を決して少年は布団を跳ね上げ気配とは反対へと足を駆った。
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