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「此処に居る者はみな己が道を究めんと日々精進を重ねておるが、 煩悩を完全に断ち切るまでは、女人禁制のこの世界は余りに辛く耐え難い。 僧共の欲望が消え去るまで、お前が…若衆を慰めてやってはくれまいか」 理不尽な申し出、吐き気を誘う要求。 しかし。 死が間近にあった世界から己を引き上げてくれた恩人の、懇願。 高僧のまなじりから今にもこぼれ落ちんとする泪に 「…判りました」 少年の口から無意識に言葉がこぼれたその日から、助けのない牢獄の日々が始まった。 高僧は広い部屋に足繁く少年を訪ね、 また少年はその訪問を心の糧としてこれまで己を保ち続けた。 毎夜欲望のはけ口として使用される少年にとって、 高僧だけがもはや絶対的な拠り所であることは言わずもがなである。 己の体を気遣い出て行く高僧の姿を、 少年は扉に錠のかかる音のするまでずっと見送っていた。 格子窓の外に広がるまばゆい朝日に照らされた深緑。 その木々の合間から何がしかの視線を感じた気がしたが、 構うことなく細い手は目の前の箸を取り上げ 進まない手つきで白米を一口分だけすくい上げた。
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