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誰が望む望まぬに関わらず夜は自らその帳を下ろす。 リィリィと夏虫の声を聴くともなしに耳に入れながら 少年は白い体を格子窓の下に寄りかからせた。 木枠の間から忍び入る月光に照らされ 繊細な髪がほのかに光を帯びたように夜の中に浮き上がる。 今宵は大神殿にすべての僧が集まり夜を通して祈りを捧げ続ける週に一度の祈祷の日。 この日ばかりは何人も、ここを訪なう事はない。 束の間の安息を噛み締め想うのは… ――明日が来なければ良い… 虚しい望みと自嘲をこぼし外の気配へ意識を移すと存外むら雲の多いことに気づき ふ、と先ほどより闇が濃くなった気がして 見るともなしに部屋を薄く照らす一指のろうそくに目をやった。 その刹那…部屋の中に何者かの気配を感じ、目線を宙へさまよわせる。 手元を照らすためのろうそくは対照的に部屋の隅により濃い陰を落としている。 何かが潜んでいるような澱んだ闇の中にぼんやりと… しかし確実に、それはそこに存在していた。 「――!」
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