第Ⅰ章  少女

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彼女は外の世界を知らない。出たことがないから。彼女は学校を知らない。音楽を知らない。絵も遊園地もデパートも友達の言葉の意味すら知らない。聞いたことがないから。誰も教えてくれないから。 少女は窓から見える,僅な景色ーー木と,芝生とベンチに腰かけている人間しか知らない。 それでも彼女は,その生活を退屈だとは思わなかった。それしか知らないから,ただ,じっと眺めていた。表情を変えることもなく。
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