プロローグ‐悠久の灯

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 僕は八雲悠。享年十六歳。現役幽霊。  なぜ死んだのか? そんなの、僕自身が知りたいことだ。    僕には記憶がない。正確には、死に至るまでの記憶が、全く無い。    つまり、気が付いていたら死んでいた状態だ。    自分が死んだかどうかを確かめることは簡単だった。  浮いている。透けている。周りの人間には見えていない。  それくらいのことなら、すぐに分かったからだ。    それから生前の記憶を頼りに家に行った。  やはり、僕は死んでいた。しばらく見ていたけど、家族や知り合いの泣き叫ぶ声が痛々しくて逃げてしまった。    それでも、分かったことはそれだけ。死んだという事実だけで、その理由は分かってない。  知り合いの会話を盗み聞きしても、「悠が死んだ」ということしか分からない。  ニュースでは、「不審死」や「謎の死因」とかいう表現で僕のことが取り上げられていた。    どうやら、僕が死んだ理由は本当に分からないらしい。  だから、僕は現世に残っているんだ。  だってさ、死んだ理由も分からないままで成仏するのって、なんか納得いかないというか、ワリにあわないというかさ。なんだか、気持ち悪いじゃないか。    で、そうやって数ヶ月頑張って調査をしていると、私立星雲高校という高校にオカルト研究部なるものがあると聞き、早速僕は見に行ってみた。こういう潜入捜査みたいなものは、幽霊にとって一番の情報源だ。だってさ、相手はほとんどが見えない人間なんだから。    最初はなにかしら手掛かりになるようなものがあればいいなと思っていただけだったんだけど、僕の考えは行ってすぐに変わった。そう、潜入捜査って考えも、全て。    それは、オカルト研究部の部長を名乗る、黒髪の少女の言葉で。     「あなた、そんなところでなにしてるの?」    
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